たぶん個人的な詩情

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映画:『悪魔の毒々パーティ』――プロムの晩にゾンビと戦う高校生、B級青春ゾンビ映画の傑作。

アメリカ映画を観ていると度々目にするプロムなるパーティ。私などはプロムがないと言うだけで日本に生まれたことに感謝したくなる*1わけですが、フィクションの題材として観るのは割と好きだったりします*2

本作はそんなプロムにそれぞれの事情から参加できなかったしなかった高校生たちと、プロムの夜に突如として蘇ったゾンビたちとの戦いを描いたB級ホラー映画です。ツッコミ所はたくさんありますし、誰しもにお勧めできるタイプの作品ではないんですが、個人的にはかなりの当たりで、好きな人は絶対好きだと思います。お勧めです。

と言うわけで、今回は『悪魔の毒々パーティ』*3の感想です。プライムビデオに字幕版がなかったため、吹き替えで見ることとなりましたが、このB級テイストにはむしろ吹き替えがあっているようにさえ思います。

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モテない、サエない、イケてない男子4人組。恋焦がれた学園のアイドルチアリーダーをダメもとで、卒業パーティに誘うも、あえなく玉砕。悶々した気持ちを晴らすため、4人は墓地に肝試しに行くことに…。その墓地ではゾンビが大量発生!命からがらパーティ会場に逃げ込むが、獲物に飢えたゾンビたちは、若い男女の生肉を求めて、会場に襲い掛かり、大パニックに!!!

原題は“Dance of the Dead”。“オブ・ザ・デッド”の名に偽りなしの正統派ゾンビ映画であるとともに、青春映画のパロディとしても楽しく見ることが出来ます。ゾンビが出てくるまでの日常パートは少しだれますが、墓から彼らが蘇ってからのテンポはよく、逃走、籠城、反撃と、バランスよくゾンビとの戦いが描かれるため、この手の映画が好きなら大満足間違いなしです。

何と言いますか、この映画は視聴者が見たいものを見せてくれるんですよね。例えばゾンビ討伐パーティが装備を整えるシーンで、下手に銃火器を与えない*4のはよく分かっているなと。釘バットに謎刃物、シャベルや手斧、鉈などなど、日常の品を武器に用いるのはやはり盛り上がります。

そんなお約束のみならず、そうした定石をあえてずらし、笑いに変えてくるセンスも素晴らしい。地面から腕を突き出す伝統的演出から一転、急に墓からアクティブに飛び上がり駆け出すゾンビたちには笑ってしまいましたし、中でも、ゾンビに襲われ窮地に陥ったバンドマンが、ロックを奏でて窮地を脱するシーンは本作屈指の笑いどころで、音楽を聴くゾンビと、自らの演奏に酔いしれるバンドマンと言う絵面には思わず爆笑。

またゾンビ映画の肝であるゴア表現のバリエーションが豊かなのも見所の一つだと思います。引き抜かれたゾンビの首にくっ付いてくる脊髄や、一捻りで引き千切れる上半身と、それに伴い彷徨い歩く下半身など、笑いとグロの組み合わせ方がとにかく上手い。そんなゴア表現と関わりの深いアクションも中々に見応えがあり、スタントは使っていないと思うんですが、不満はない出来栄えです。

プロムを壊す。ただそれだけを目的に撮られたのではと勘ぐってしまうほどプロムが舞台となる理由もない本作、ゾンビの発生の原因なんかも匂わされますが、そんな理屈は捨て置いて、頭を空っぽにして観るのが一番でしょう。

総じて笑いに特化した作品でありながら、ゾンビ映画らしい魅力も併せ持った最高のバカ映画『悪魔の毒々パーティ』、是非見て欲しいと思います。お勧めです。

では今回はこの辺で。

▶Dance of the Dead / アメリカ (2008)
▶監督:グレッグ・ビショップ
▶脚本:ジョー・バラリン
▶制作:イハド・ブレイバーグ、グレッグ・ビショップ
▶撮影:ジョージ・フォイヒト
▶音楽:クリストファー・カーター
▶キャスト:
ジャレッド・カスニッツ:ベニー
グレイソン・チャドウィック:リンジー
チャンドラー・ダービー:スティーブン
カリッサ・カポビアンコ:グウェン

*1:理由は察して。

*2:アメリカン・グラフィティ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など。

*3:『悪魔の毒々モンスター』シリーズとは無関係。

*4:もちろん銃火器が出ないわけもなく、ミリタリ枠の体育教師もちゃんと登場する。